放射線治療と免疫|熊本市中央区の放射線外科

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お知らせ

2018.08.21

放射線治療と免疫チェックポイント阻害剤

稀に癌に対して放射線治療を行うと放射線を当てた癌の縮小だけでなく、放射線を当てていない離れたリンパ節転移も不思議なことに縮小する、という現象がおきることがあります。外科や内科の先生たちにはあまり知られていませんが、放射線治療の専門医の間では、アブスコパル効果として昔から知られていました。

このアブスコパル効果は放射線治療により死んだがん細胞の破片がいわゆるがんワクチンとなり免疫細胞によるがん細胞の認識を助けて、がん細胞に対する免疫細胞の攻撃が増すことで生じた結果ではないかと考えられています。

 

また、最近ではがんに対する薬剤の開発がめざましく、特に免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボやキイトルーダなど)といわれる薬剤が次々に開発・認可されています。通常、人体には免疫細胞により害となる異物を自分で除去する機能がありますが、がん細胞はこの免疫の働きを抑え込み、免疫による攻撃を避けるような性質があります。その免疫を抑え込む働きを解除させるのが免疫チェックポイント阻害剤となります。つまり免疫チェックポイント阻害剤を使用することで、がんに対する免疫が活性化していくのです。

 

そこでこの数年、がんに対し根治目的の放射線治療ではなく、がんのワクチン作成を目標とした短期間の照射を行い、その後に免疫チェックポイント阻害剤(がんによって抑えられていた免疫の活性化)を使用すれば相乗効果によって高い治療効果が得られる可能性があるのではないかと考えられてきています。

 

まだまだ治療効果は不明で、2つの治療を併用することで副作用も強く出る可能性もあり、現在の標準治療を優先すべきなのですが、そう遠くない将来、これまで薬物治療のみしか施行されなかった全身転移がある患者さんに対して、まず部分的・短期間の放射線治療を行い、その後免疫チェックポイント阻害剤を使用する、という方法が一般化されるかもしれません。

(反対意見は多々あると思いますが現時点であっても標準治療が難しく他に治療手段が無い場合には本人や家族の希望と了解があればチャレンジしてもよいのかもしれません。ただし施行できる病院は限られているでしょう。)

 

*当院ではがん治療の経験豊富な放射線治療専門医が診療に従事しており、ご自身やご家族の治療方針・方法に関しての相談があればお受けいたしますので、その際はご予約お願いいたします。

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